「遺産は少ないから大丈夫」が一番危険?相続争いの実態を司法統計で解説
公開日:2026年8月16日
「うちは財産が少ないから、相続で揉めることはない」——そう思っていませんか。実は、これはもっとも危険な思い込みの一つです。国の公的なデータを見ると、相続争いの多くは、いわゆる“普通の家庭”で起きています。この記事では、最高裁判所の司法統計をもとに実態を確認し、揉めないための備えを、行政書士がわかりやすく解説します。
データで見る「相続争いの実態」
家庭裁判所で実際に取り扱われた遺産分割事件を、遺産の金額別に見てみましょう。最高裁判所の司法統計によると、割合はおおよそ次のようになっています。
| 遺産の価額 | 遺産分割事件に占める割合 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 約3分の1(およそ33%) |
| 5,000万円以下(1,000万円以下を含む) | 全体の約4分の3(およそ76%) |
出典:最高裁判所「司法統計年報(家事事件編)」遺産分割事件のうち認容・調停が成立した件数(遺産の価額別)をもとに作成。割合は概数です。
つまり、家庭裁判所まで持ち込まれた相続争いの約4分の3は、遺産5,000万円以下。そして約3分の1は、遺産1,000万円以下で起きています。「遺産が多い家の話」どころか、むしろごく一般的な家庭でこそ起きているのが実態です。
なぜ遺産が少なくても揉めるのか
「少ないほうが揉めない」と考えがちですが、実際は逆の面があります。おもな理由は次のとおりです。
① 財産が「自宅(不動産)1つ」に偏りやすい
遺産が少ない家庭ほど、主な財産が自宅などの不動産1つということが少なくありません。不動産は、預貯金のようにきれいに分けられないのが難しいところ。「誰がその家を引き継ぐのか」「引き継ぐ人は、他の相続人にいくら渡すのか」で意見が対立しやすくなります。
② 分ける“余白”が少ない
遺産が多ければ、「自宅は長男、預貯金は次男」のように調整の余地があります。しかし遺産が少ないと、調整に使える現金が乏しく、譲り合いが難しくなります。少額だからこそ、一人ひとりの取り分が生活に直結し、真剣な対立になりやすいのです。
③ 「感情」が絡む
相続は、お金の問題であると同時に気持ちの問題でもあります。「介護をしたのは自分」「昔からえこひいきされていた」——そうした積み重ねが、金額の大小に関係なく対立の引き金になります。
揉めないための備え
相続争いは、事前の備えで大きく減らせます。特別なことではなく、次のような準備が有効です。
- 遺言書を用意する……「誰に何を引き継ぐか」を元気なうちに明確にしておくと、残された家族が迷いません。特に不動産がある場合に有効です。
- 財産の一覧をつくる……どこに何があるかを整理しておくだけで、話し合いがスムーズになります。
- 話し合いの内容を書面に残す……分け方がまとまったら、口約束で終わらせず「遺産分割協議書」として残しておきましょう。
「何から準備すればいいか分からない」という段階でも大丈夫です。まずは現状を整理するところから、お手伝いできます。
「誰に頼むか」の役割分担
相続に関する手続きは、内容によって担当する専門家が法律で分かれています。とくに“揉めているかどうか”で依頼先が変わる点に注意が必要です。
| やりたいこと | おもな担当 |
|---|---|
| 遺言書の作成サポート・文案づくり | 行政書士 |
| (争いのない)遺産分割協議書の作成・戸籍収集 | 行政書士 |
| 不動産の名義変更(相続登記) | 司法書士 |
| 相続税の判断・申告 | 税理士 |
| 相続人どうしの争いの交渉・代理、調停・審判 | 弁護士 |
よくあるご質問
遺産が少なくても相続で揉めるのはなぜですか?
遺産が少ない家庭では、主な財産が自宅など不動産1つに偏りがちだからです。不動産は現金のようにきれいに分けられず、「誰が引き継ぐか」「代わりにいくら払うか」で対立しやすくなります。司法統計でも、遺産分割事件の約4分の3は遺産5,000万円以下で起きています。
揉めないためにできる備えはありますか?
もっとも有効なのは、元気なうちに遺言書を用意しておくことです。誰に何を引き継ぐかを明確にしておくと、残された家族が迷いません。話し合いがまとまった段階で遺産分割協議書として書面に残すことも有効です。
すでに相続人どうしで揉めている場合はどうすればよいですか?
争いがある場合の交渉・代理や、家庭裁判所での調停・審判は弁護士が扱う分野です。行政書士は、争いのない場合の書類作成(遺産分割協議書など)や戸籍収集を担当します。状況に応じて適切な専門家をご案内します。
まとめ
「遺産が少ないから大丈夫」は、データの上ではむしろ逆。相続争いの多くは、不動産1つ・預貯金数千万円以下といった、ごく普通の家庭で起きています。だからこそ、金額の大小にかかわらず、元気なうちの備えが大切です。
- 家庭裁判所の遺産分割事件の約4分の3は遺産5,000万円以下(司法統計)
- 少額でも、不動産1つは分けにくく対立が起きやすい
- いちばんの予防は「遺言書」と「話し合いの書面化」
たすき行政書士事務所