後見

成年後見制度改正の確定内容|後見・保佐は廃止、「補助」への一元化へ

以前のコラム「成年後見制度の見直し(改正)ポイント」では、成立したばかりの改正内容を大まかにご紹介しました。その後、法務省から詳しい資料が公表され、「後見・保佐の制度を廃止して、補助の制度に一元化する」ことなど、改正の内容がより具体的に確定しています。今回は、確定した内容と、前回コラムからの変更点をあわせてわかりやすく解説します。

改正のおさらいと今回わかったこと

2026年(令和8年)6月17日、成年後見制度と遺言制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。前回のコラムでは、この法律の成立を受けて「見直しの方向性」を中心にご紹介しましたが、その後、法務省が公表した詳しい概要資料により、制度の具体的な中身がかなり明確になりました。

ここからは、その確定した内容のうち、特に大切なポイントを順番に見ていきます。

【最重要】後見・保佐を廃止し、「補助」に一元化

今回の改正でいちばん大きな変更は、「後見」と「保佐」の制度を廃止し、「補助」の制度に一元化することです。前回のコラムでは「区分を見直し、補助を中心に一元化する考え方が示されている」という、やや控えめな表現でご紹介しましたが、これは検討段階の話ではなく、法律として確定した内容です。

現在の制度は、本人の判断能力(事理弁識能力)の程度に応じて、次の3つのどれかに画一的に当てはめる仕組みになっています。

  • 後見……判断能力を欠く常況 → 包括的な代理権・取消権
  • 保佐……判断能力が著しく不十分 → 法定の重要な財産行為の取消権+特定の行為の代理
  • 補助……判断能力が不十分 → 特定の行為の代理、法定の重要な財産行為の一部の取消し

特に「後見」は代理権・取消権が包括的なため、たとえば「遺産分割だけ手伝ってほしい」という場合でも、本人の自己決定が必要以上に制限されてしまう、という課題がありました。改正後は、「①判断能力が不十分」「②本人の同意」「③制度利用の必要性」を要件として、特定の行為について個別に代理権や同意権を付与する仕組みに、基本的に一本化されます。

判断能力を欠く常況の方を守る「特定補助の仕組み」

「後見が廃止されたら、判断能力がほとんどない方の保護が弱くなるのでは?」と心配になるかもしれませんが、その点も手当てされています。

補助を開始した方が、実は判断能力を欠く常況にあると認定される場合には、法定の重要な財産行為についていずれも取り消せる「特定補助の仕組み」を選んで利用できます。これにより、これまでの「後見」に近い、しっかりとした保護を受けることも可能です。なお、この仕組みを利用する際は、医師2人以上の意見を聴いたうえで、明らかに必要がないときは鑑定が不要とされています。

「必要がなくなったら終了」できる制度へ

前回のコラムでは「期間を区切って利用できるように(更新のしくみ)検討されている」とご紹介しましたが、確定した内容は少し異なり、「期間」ではなく「必要性」で区切る仕組みになりました。

具体的には、判断能力が回復していない場合であっても、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権により制度利用を終了できるようになります。補助人には家庭裁判所への年1回の状況報告が義務づけられており、その報告の際に「もう必要がない」と判断されれば、終了につながる仕組みです。

本人の意思の尊重・後見人の交代のしやすさ

本人の意思をより尊重する仕組みも、条文レベルで具体化されました。

  • 家庭裁判所が補助人を選任する際に考慮する要素の冒頭に「本人の意見」を規定(これまでは考慮要素の最後に位置づけられていました)
  • 補助人は職務を行う際、本人に情報を提供し、話を聴くなどの方法で本人の意向を把握することが義務化
  • 解任事由に「本人の利益のために特に必要があるとき」を追加。横領などの不正行為がなくても、たとえば本人と面談を行わないなど、適切な保護ができていない場合には交代させやすくなります
  • 家庭裁判所が報酬を決定する際、補助人が行った事務の内容などを考慮要素とすることを明確化(報酬の予測可能性の向上)

亡くなった後の手続きへの対応も拡充

これまで死後の事務(葬儀・埋葬の契約、未払金の支払など)を行う権限は成年後見人にのみ認められていましたが、補助に一元化されることに伴い、補助人にも、本人の死体の火葬・埋葬契約の締結や、権限の範囲内での相続財産保存に必要な行為(例:未払いの施設利用料の支払)を行う権限が認められます。

また、判断能力を欠く常況の方に対して意思表示を受け取る人がいない場合に備え、家庭裁判所が意思表示を受領するための特別代理人を選任する制度も新設されます。

今、後見・保佐を利用している方はどうなる?

すでに後見・保佐を利用中の方が不利益を受けないよう、経過措置が用意されています。

希望対応
今の制度のまま利用を続けたい基本的には現行法の内容のまま利用継続が可能(解任事由・本人の意向尊重義務のみ改正後の民法を適用)
新しい補助の制度に移行したい家庭裁判所へ申立てをして新制度を利用。現在の後見・保佐開始の審判は取り消される
制度利用をやめたい後見・保佐開始の審判の取消しを申し立てることが可能

出典:法務省民事局「成年後見制度の見直し 経過措置」(令和8年3月)をもとに作成。令和7年12月末時点の利用者数は、後見18万828人、保佐5万8,162人、補助1万8,078人(最高裁判所事務総局家庭局調べ)。

ご注意:この記事は、法務省が公表している資料をもとにした一般的でやさしい解説です。個別の事情によって適用される内容は異なりますので、最新・正確な情報は法務省の公式ページ「「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について(法務省)」をご確認ください。なお、同じ法律では遺言制度の見直し(電子データで作成し法務局が保管する「保管証書遺言」の創設、押印の任意化など)も行われています。詳しくはこちらのコラムで解説しています。

いつから変わる?施行スケジュール

成年後見制度の見直しは、公布の日(令和8年6月24日)から起算して2年6か月を超えない範囲内で、政令で定める日に施行されます。前回コラムでご紹介した「2028年ごろの見込み」という点に変わりはありませんが、具体的な施行日は今後の政令で決まります。

なお、同じ法律に含まれる遺言制度の見直しは、押印の任意化などは公布から1年以内、システム改修を伴う保管証書遺言の創設などは公布から3年以内に、それぞれ別のスケジュールで施行されます。

前回コラムからの変更点まとめ

前回コラム「成年後見制度の見直し(改正)ポイント」の内容と比べると、次の点がより具体的に確定しました。

項目前回コラム(2026年7月時点)今回わかった確定内容
後見・保佐・補助の区分「補助を中心に一元化する考え方が示されている」(検討段階の紹介)後見・保佐の制度を廃止し、補助に一元化することが確定。判断能力を欠く常況の方には「特定補助の仕組み」を用意
利用をやめられる仕組み「期間を区切って利用できるように(更新のしくみ)」を検討中と紹介期間ではなく、「必要がなくなったとき」に家庭裁判所の判断で終了できる仕組みに
後見人(補助人)の交代「交代しやすくする方向で検討」と紹介解任事由に「本人の利益のために特に必要があるとき」が追加され、不正がなくても交代可能と確定
本人の意思の尊重抽象的に「意思を尊重」と紹介選任時の考慮要素の冒頭に本人の意見を明記、職務遂行時の意向把握も義務化と条文レベルで明確化
法律の名称・成立日「2026年6月に成立・公布」とだけ紹介「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)、6月17日成立・6月24日公布と確定
今の利用者への経過措置記載なし現在利用中の方は原則そのまま利用継続可。新制度への移行や利用終了の申立ても可能
新設される制度記載なし補助人の死後事務権限の拡充、意思表示受領のための特別代理人制度の新設など

元気なうちにできる備え

制度の中身がより具体的になっても、「判断能力があるうちに、自分の希望を決めておく」ことの大切さは変わりません。今からできる備えには、次のようなものがあります。

  • 任意後見契約を結び、将来の支援者・支援内容を自分で決めておく
  • 見守り契約財産管理の委任契約もあわせて検討する
  • エンディングノートで、医療・介護・お金の希望を残しておく
  • ご家族と早めに話し合っておく

よくあるご質問

成年後見制度は具体的に何が変わりますか?

後見・保佐の制度が廃止され、「補助」の制度に一元化されることが確定しました。判断能力を欠く常況の方については「特定補助の仕組み」で、これまでと同じような保護を受けられます。

今、後見・保佐を利用している人はどうなりますか?

基本的にはこれまでどおりの内容で利用を続けることができます。新しい補助の制度への移行や、利用の終了も、家庭裁判所への申立てによって対応できます。

いつから施行されますか?

公布日(令和8年6月24日)から2年6か月を超えない範囲内で、政令で定める日に施行されます。おおむね2028年中の見込みです。

まとめ

今回、法務省の詳しい資料により、成年後見制度の改正内容がかなり具体的に確定しました。

  • 後見・保佐の制度を廃止し、「補助」に一元化することが確定
  • 判断能力を欠く常況の方には「特定補助の仕組み」で従来同様の保護を用意
  • 「必要がなくなったとき」に終了できる仕組み、後見人の交代のしやすさも確定
  • 今の利用者は原則そのまま利用継続可。施行は2028年ごろの見込み

「自分や家族の場合はどう備えればいい?」「今利用している後見はどうなるの?」と迷ったら、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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